前日
今回も、同行者は弘法大師様とＭさんとＩさんの同行四人です。
仕事が長引いて、遅い時間の出発となりましたので名古屋駅でお弁当と缶ビールを購入してから
新幹線に乗り西明石駅へ。居酒屋新幹線開店です。
名古屋名物味噌カツ弁当と缶ビール
周りを見渡すと半分以上の方が同じく居酒屋を開店していました。
西明石駅前の宿に泊まります。ここに泊まったのには理由があります。
一つは、今回のスタート地点が前回打ち止めとした高速道路の志度ＢＳです。ここに行くため、明日
の朝に乗車する高速バスのBSがある舞子駅まではわずか３駅です。６分で着けます。
もう一つは宿の安さです。三宮駅前の宿に比べると２～３０００円安いです。
ということで、今夜はここで１泊。明日に備えて早めの就寝です。
１日目
西明石駅からJRで舞子駅に到着。ここから明石大橋の橋脚の部分に付けられたエレベーターと階段
を登り、高速舞子BSに到着。
思い返せばここも第１回から第４回までの徳島区間を歩いた時に利用した場所です。ここはビルの
２０階くらいの高さがあり、バス停から明石海峡が見えています。第１回の時にこの景色を見て、いよ
いよ四国に向かうのだという気分の高鳴りを感じたのを覚えています。
少し早めに着いてバスを待っていましたが、バス停は行列ができています。平日なので通勤の方々
なのでしょうが、本州側から四国や淡路島に向かう人が意外と多いのに驚きました。
ほどなくIさんとMさんが到着しました。Iさんとは１月のスキー以来４か月ぶりの再会です。Mさんとは
２週間前のGWに九州の大崩山登山をして以来です。
高速舞子ＢＳを７：３５発のバスで出発。明石海峡大橋を渡り、淡路島を越え、大鳴門橋を渡って四国
入りです。バスは順調にというか、志度ＢＳに２０分早着で９：０５に到着。高速バスは四国内は降車のみ
の対応ですのでこうしたこともあるのですね。
実は２０分ほど前に明後日乗車するバス停のある鳴門西PAを通過しました。高速道路をバスだと２０分
ですが、これから歩いて３日間をかけて移動します。
遍路開始です。８７番長尾寺を目指して歩きだします。バス停から階段を下りて側道を歩き、その先で
県道３号線に突き当たると右折して高速道路をくぐり、南に進みます。途中、左手に幸田池という大きな
溜池があります。
JRの線路が横に並行して走っています。「オレンジタウン」という変わった名前の駅がありました。
地元とJR四国が開発した団地だそうです。駅の先の高台に大きな住宅が建ち並んでいました。
その線路が左に離れて行き、バス停から約２ｋｍの所の道沿いの右側に当願堂（幕張・当願大明神）
があり、境内というか御社の前の広場の一角に東屋がありました。９：３０着。
初めてみる大きな案内看板がありました。（この看板はこの後何度も目にしました。）
当願堂の前の広場と東屋 大きな案内看板
この広場の橋から県道を離れて右側の水路沿いの道に入っていきます。石柱や標示看板がかなり
の頻度であり、迷うことはありませんでした。
石柱と案内板
石柱と案内板
案内板
その先に８７番長尾寺の奥ノ院の玉泉寺がありますので立ち寄ります。
最初は気づかずに通り過ぎてしまいそうだったくらい、ひっそりとした佇まいです。９：４５。
この寺は寺歴によると、『弘仁５年（８１４）に弘法大師空海が四国霊場開創の途中、紫雲に光明を放つ
霊石に感じて一宇を建立して地蔵菩薩を安置し、「末世の衆生は日を限ってこの地蔵尊を念ぜよ。
災厄苦難を救い、息災増益を守らせ給ふ」と造田に勤しむ諸人の安心を願われた。以来、日限地蔵尊
の信仰を篤くして、四国霊場八十七番奥ノ院に定められた。』と伝わっています。
明治時代初期に廃寺となりましたが、昭和５年（１９３０）に観音寺町（現・観音寺市）にあった玉泉寺を
移転し、合併し復興したそうです。
山門は薬医門です。この山門は霊芝寺より移転したものと言われているそうです。境内の堂宇はその
再建時に造られたものだそうです。山門の前には紫陽花の木がありましたが少し遅かったのか花は
咲いていませんでした。
山門 説明板
薬医門をくぐって階段を登った先の境内に諸堂が鎮まっています。鐘楼、癒し石、萬願大師堂、
南無座不動明王像、馬頭観音像があります。
鐘楼
正面にある本堂の前は藤棚で覆われています。残念ながら開花時期は過ぎて花は散っていました。
毎年５月初旬には見事な藤を見ることができるそうで、藤の花の寺としても有名で、多くの方がこの
藤を見るために訪れるそうです。惜しかったです。
本堂には、弘法大師が刻んだ御本尊の日切地蔵菩薩が祀られていました。
大師堂は本堂の左横の祠であり、手前に修行大師石像があります。（写真はなし）
本堂
玉泉院を出て旧道を進むと鴨部川に架かる広瀬橋に到着。この広瀬橋は渡らずに右折して川沿い
の道を進みます。
橋の近くに墓地があり、その脇に江戸期のお遍路さんの無縁仏があります。今と違い、遍路は命がけ
だったのですね。
５００ｍ程進み、その先にある「長尾遍路橋」を渡ります。この橋のたもとのしるべ石には「手のひら」
と「指差し」が刻まれています。香川県に入ってからこのタイプをよく見かけます。
橋の近くには遍路小屋がありました。腰を掛けて軽く休憩です。１０：１５。
お遍路さんの無縁仏 長尾遍路橋
橋の横の遍路小屋
一休みして歩きだします。途中に写真を使った案内地図がありました。珍しいですね。
写真を使った案内地図
長尾遍路橋から住宅街の中を１，３ｋｍ南へ歩くと長尾寺へ到着です。北東の角に到着して、すぐ先に
境内に入れるところがありますが、山門のある南側に回り込みます。１０：４０着。
この寺の仁王門前には経憧（きょうどう）が左右一対で２基あります。石造で、西側のものが弘安６年
（１２８３年）、東側のものが弘安９年（１２８６年）の建立だそうです。軽く８００年近く前のものです。鎌倉
時代に元寇での戦死者を慰霊するために建てられたものだそうです。ちなみに経憧というのは写経を
埋めた上に建てるものだそうです。
山門前にて
山門は仁王門なので当然仁王様がいらっしゃいますが、ここは細かい金網が施されていて写真が
うまく撮れませんでした。
また、この門には鐘がぶら下がっていました。鐘楼門でもあるみたいです。ですが何故か鐘突き棒の
紐がありませんでした。突けないようにしているのかもしれません。
もはや定番となりつつある大草鞋もありました。
仁王門 仁王像
門をくぐると、広い境内があります。ほぼ正方形ですね。正面に本堂があり、参道の右側には楠木
（香川県の保存木）の大木がそびえています。かなり大きなものです。その左側には手水舎があります
ので手を清めます。
境内 大楠
正面に本堂、その右横に大師堂、左横に護摩堂が建っています。本堂の屋根瓦には葵の紋が入って
います。高松藩主松平頼重がこの寺を庇護し、松平家の祈願寺であったためだそうです。
この寺にはもう一つ話があり、源義経の愛妾静御前が故郷に帰り、この寺で得度したそうです。その時
髪を埋めた髪塚があります。護摩堂の隣にありました。大師堂の右側には薬師堂もありました。
護摩堂 左側に髪塚 本堂
大師堂 薬師堂
また、境内の一角には長尾天満宮がありました。神仏習合の名残でしょうね。
天満宮
山門の近くにこれから向かう８８番大窪寺までの詳細な地図がありました。ルートが３つ書かれて
いました。
案内地図
８７番を打ち終え、いよいよ最後の８８番大窪寺へ向かいます。６年半をかけて遍路旅を続けてきま
したが、それもあと１寺となりました。
余談ですが、長尾寺の山門のすぐ前に旅館が数件建ち並んでいました。
仁王門を出て８８番大窪寺に向かいます。１１：００。でもその前に腹ごしらえです。近くにあるうどん屋
「セルフうどん元気」で昼食です。１１：０５。
この店は初めての自分で麺を茹でる完全セルフスタイルでした。以前はこのスタイルのお店もたくさん
あったそうですが、コロナ対策で少なくなってしまったそうです。念願のうどん屋のおでんもいただきました。
やや薄味でしたが美味しかったです。
かけそばと天ぷらとおでん
お店を出て県道３号線を歩きます。１１：２５出発。この道は鴨部川沿いに南へまっすぐの一本道です。
途中から少しずつ登り坂になってきました。８８番大窪寺は、徳島県との県境に近い矢筈山（標高７８８ｍ）
の東側中腹に位置します。お寺の標高も４５０ｍあり、長尾寺からは４００ｍほどの標高差を登ることになり
ます。
途中で正面に矢筈山と思われる山が見えました。（ひょっとしたら女体山かもしれません。）
矢筈山もしくは女体山
途中の道端に石仏が建ち並んでいました。お堂の前には四天王像（何故か３体だけ）もあります。
四国ではこうした景色がよく見受けられました。
道端の石仏群
お地蔵様が浮き彫りされた石柱がありました。
地蔵尊？
長尾寺から５ｋｍ程歩いたところで前方に大きな壁のようなものが見えてきました。あれが前山ダム
です。ダムの湖畔には「前山おへんろ交流サロン」があります。１２：４０に到着。
前山ダム 案内板
前山おへんろ交流サロンの施設内には、「交流サロン」と「へんろ資料展示室」があります。
前山おへんろ交流サロン
交流サロンには、立体感ある四国八十八箇所の地形模型があり、これを見るとここまで遍路してきた
道のりを振り返ることができ、達成感を実感することができます。
また、遍路に関する資料も展示されています。思ったのですが、この施設は１番霊山寺の近くに作った
方がよいかもしれません。
ここでは、歩き遍路の人が申請をすると「遍路大使任命書」と「同行二人バッジ」を頂くことができます。
もちろん頂きました。
お接待でお菓子やお茶もいただきました。また、ここから８８番大窪寺までの道のりについても詳しく
教えていただきました。
すぐそばに「道の駅ながお」もあります。立ち寄りましたが、規模の小さなものでした。
ここから大窪寺へはルートは３つあります。①は江戸時代の旧遍路道を行く道で１１ｋｍ、②は四国
のみちに指定されていて、来栖渓谷、女体山を経て大窪寺に至る峠越えの遍路道、③は多和神社を
経て、太郎兵衛館で②に合流する遍路道。我々は③を歩くことにしました。
１３：１０に前山おへんろ交流サロンを出発。約２００ｍ進むと鳥居がありました。これは「女体山一の
鳥居」でかつては左側にある前川ダムの湖底に沈んだ集落の中にあり、ここに移設されたものだそう
です。
女体山一の鳥居 説明書
更に３００ｍほど進むと左手に分岐する道があります。こちらが②のルートですが、アップダウンが
多く、道は荒れているとの事です。
直進して舗装された道を進みます。この道は途中で標高７７４ｍの女体山を越えます。現在地点の
標高は約２００ｍ。標高差５７０ｍを登らないといけません。ですが距離が４ｋｍほどありますのでそれほど
急な登りはないと思います。（実はそうではありませんでした。）
途中に石柱があり、大窪寺までの距離を表示しています。９，５ｋｍと５，９ｋｍの２つの距離が書かれ
ていました。私達は短い方を歩きます。
その先で遍路墓でしょうか？１０基以上の石仏と石柱が建ち並んでいるところがありました。
距離表示石柱 遍路墓？
その先で多和神社に到着しました。１３：４５。地区名と同じ名前なので地元の氏神神社ですね。
多和神社
林道は少しずつ傾斜が増してきていますが、まだ楽な道です。それにしても暑いです。上着を脱い
でTシャツ姿で歩きます。空は曇り空ですが、蒸し暑いです。
その先で「昼寝城跡」という看板がありました。１４：１０。珍しい名前のお城です。林の中に入っていく
道がありましたので天守跡に行けそうですが、さすがにパスしました。ここで一休みです。
説明板があり、んぜこんな山奥に城を立てたのかと気になってみてみると、近くに鉱山などがあり、
重要な場所だったようです。この城は明日行く予定の引田城などと併せてこの辺り一帯を支配していた
寒川氏が建てたと書かれていました。
昼寝城跡入口
林道の傾斜がじわじわと増してきました。１５度以上の傾斜があるでしょう。この辺りに「太郎兵衛の館」
というものがあるはずなのですが見当たりません。代わりにどこかの研究施設の宿泊所という建物が
ありました。これがそうなのでしょうか？なんだか違う気がします。
さらに進むと左手から道が合流してきました。これがルート②の道のようです。土道で結構荒れて
います。おまけに先にある山からかなり下ってきています。こちらを通らなくてよかったと思いました。
合流点には四国の道の標識がありました。この標識はかなりの本数あり、残りの距離が減っていく
のがわかり、励みになりました。１４：２５。
四国の道の標識
合流点から２００ｍほど歩いたでしょうか？右手に分岐する山道があり、「女体山山頂まで１，１３８ｍ」
となっています。こちらに進みます。１４：４０。
分岐点
ここからの道はほとんど登山道でした。傾斜のある土道で、階段もあります。これは予想外でした。
途中に苔むした石段などがあり雰囲気はよいのですが、とても味わっている余裕はありません。
必死で登ります。
登山道
途中でまた林道と交差して先に進みます。ここに石柱があり、「山頂７０９ｍ」と書かれていました。
ということはほとんど女体山の山頂と同じ標高？でもそれほど登った記憶がありません。（実際に、
この後かなり登りましたので、これは残りの距離表示だったみたいです。）
？な看板 さらに続く登り道
その先で下の写真のような階段と橋がありました。この区間が土砂崩れで旧道が通れなくなり、迂回路
を造っていただいたとのことです。ちなみに名前が「女体山遍路道保全橋」というそうです。
道を直していただいて感謝ですが、あまりにお役所的な名前ですね。
迂回路
迂回箇所から先が本日のハイライト、激登りの箇所が始まりました。岩場もあり、まさに登山です。
というか普通の山でもこれだけ急な箇所は少ないと思います。
この区間は距離にするとわずかでしたが、標高は間違いなく２００ｍ以上を上がったと思います。
激登りの登山道
ようやく登り切ったのでしょう、小さな広場と御社があります。何も表示はありませんが、ここが山頂
だと思います。いやはや凄い登りでした。アルプス顔負けの急登りでした。１５：２５。
御社のある小広場
広場の北側の端の所は木がなくて開けていて景色を見ることができます。木がないのも当たり前で、
岩場で崖になっています。怖いですが、岩の上を伝って先端近くまで行き、景色を楽しみました。
前回歩いた屋島や八栗山、檀の浦、その先の瀬戸内海も見えています。苦労して登ったごほうびですね。
屋島、八栗山、檀の浦、その先に瀬戸内海
一休みして先に進みます。ほんの１分ほど進んだところに東屋と女体山山頂の看板がありました。
東屋と女体山山頂の看板
ここでは休憩せずに先に進みます。ところが今度は激下りが始まりました。大窪寺の標高は約４５０ｍ。
３００ｍ程を下らないといけません。急坂の上に所々にある階段の段差はかなり高く歩きにくいです。
おまけに洗堀されていて、土留めの丸太との部分にも段差があり、足がぶつかります。その上、地面が
濡れていて滑ります。
慎重に一歩一歩下ります。下りばかりと思いきや、林道と交差した先でまた登ります。林道の横の
せいか標識や石柱が設置されていました。
林道交差地点の標識や石柱
途中で数か所ツツジの花が咲いていました。少し遅かったようでほとんど散りかけでしたが、１か所
見事な紅色の花が満開でした。
紅色のツツジ
さすがに八十八カ所です。最後の最後まで修行をさせてくれます。
悪戦苦闘しながら下ること約３０分。道の横に展望所のような所があり、そこから下に大窪寺の境内
が見えました。１６：００。
大窪寺の境内が眼下に
さらに１５分ほど下ると大窪寺の境内に到着。１６：２０。山門側ではなく境内の真ん中に着いてしまい
ました。突然境内に着いたので、「ようやくたどり着いた。」という達成感が今一つでした。
そのため、正門の二天門に向かい、門を出てUターンし、再度境内に入ります。二天門ですので仁王像
ではなく梵天と帝釈天が祀られていました。
二天門 梵天と帝釈天
ちなみに門の内側はもはや定番と化した感のある大草鞋が祀られていました。
二天門内側
ちなみに、この寺は養老年間（７１７～７２３）、行基が堂を建立したことに始まります。その後弘法大師
が巡錫中、胎蔵ヶ峰（たいぞうがみね）の岩窟で求聞持法を修し、薬師如来を刻んで本尊とし、堂宇を
整えたといいます。
この時大師は、唐の恵果阿闍梨（けいかあじゃり）から授かっていた三国（インド･唐･日本）伝来の錫杖
も本尊と共に納めています。その後寺は多くの信者を集め、僧坊も１００を超える規模だったそうです。
また早くから女性の入山を許していたので「女人高野」とも呼ばれ栄えていましたが、天正の兵火で焼失。
初代高松藩主松平頼重が寺領を寄進し再興。２代頼常も本堂や仁王門の修復を行いました。しかし、
明治３３年（１９００）の火災で堂塔を焼失し、二天門を除く現在の建物はその後再建されたものです。
緑なす木々に包まれた境内は、四季折々に美しく、遍路の疲れをいやしてくれます。
門をくぐり、石段を登ると正面に本堂があります。奇岩に覆われた胎蔵ヶ峰を背にして立つ本堂は圧巻
です。結願の寺にふさわしい姿です。
参道の左側にある手水で手と顔を洗います。汗で汚れまくっていますので。
本堂前で般若心経（の一部）を唱え、結願します。８８番目の、そして最後のお寺を打ちました。
境内正面奥に本堂 参道左側の手水舎
本堂
本堂内には賓頭盧長者像がありました。ちなみに、本堂右前には不動明王像がありました。
賓頭盧長者像 不動明王像
その右奥に阿弥陀堂があります。その前にある「ここが打留の水があふれてゐる」の句碑は、漂泊の
歌人･山頭火が当寺で詠んだものだそうです。山頭火は長尾町で多くの歌を詠み、町内には「夜が長い
谷の瀬音のとほくもちかくも」など、１０基ほどの句碑が建てられているそうです。見落としてしまいました。
本堂に参拝して次は大師堂です。大師堂は少し離れたところにあります。階段を登り、西側に１００ｍ
くらい進むと大師堂があります。この大師堂は非常に大きいです。これまでに見た中でもおそらく最大級
です。１面が３０ｍ位の長さの正方形の建物です。最後の大師堂を打ちます。
大師堂
大師堂の横には、多くの金剛杖が置かれたガラス張りの寶杖堂があり、長い遍路を共にしてきた
歩き遍路の証の金剛杖が奉納されています。（私たちは持っていないのですが。）
この金剛杖は、毎年２回、お焚き上げをしていただけるそうです。
大師堂の前にはお砂踏みができる道場があり、八十八箇所全ての小さな本尊が祀られ、一周すれば
実際の遍路と同じ効験があると言われています。が、実際八十八ヶ所を歩いた身としては、「それは
違うだろ？」と突っ込みをいれたくなります。
ふと左手を見ると立派な門があります。これは平成２年に造られた仁王門です。せっかくなので行って
みることにしました。
門の手前に鐘楼がありましたので、〆に突かせていただきました。
鐘楼 修行大師像
仁王門
ここの仁王像はどことなくアニメチックな感じでした。
仁王像
最後の御朱印を頂くため、本堂前にある納経所に戻ります。納経所の横には「結願大師」の像が
ありました。
納経所 結願大師
最後の１ページに御朱印をいただきました。
ちなみにこの納経所では結願の証明書がもらえます（もちろん有料です。）せっかくなので頂きました。
毛筆で書かれた証明書はなかなか乾かずに苦戦していると、お一人入ってきたのですが、証明書を
乾かしている私達を見て、「あの証明書はもらえるの？結願した納経帳はどうしたらよいの？と納経所
の方に尋ねていました。
「結願した納経帳は高野山に収める。」と聞くと、「じゃあ行ってきます。」と話されていました。
後で話しかけて聞いてみると、スクーターで１１日間で回ったそうです。いろいろな人がいるものだと
思いました。基礎知識のない人もいるのですね。
長かった遍路旅が終わりました。６年半。２１回の区切り打ちでの結願です。さすがにじわじわと
達成感で胸がいっぱいになってきました。
「ありがたかった。」という歩き遍路の方の言葉が良く理解できます。歩き始めた時は、「途中から
楽をして車に乗ってしまうのだろうな。」と思っていましたが、何とかやり遂げました。
本堂の前で記念写真を撮りました。
結願証明書を手に本堂前にて
結願を終えて思わず３人で「やりましたね。」と言葉を交わしました。何と言ったらよいのか、打ち終えて
気が緩んだのか、体から力が抜けてしまいました。山門をくぐって階段を降りたところで振り返りました。
名残惜しいという気持ちでした。
山門を後に
余談ですが、山門の前には数件のお店があります。門前通りですね。
門前街
山門の直ぐ前にある八十八庵という店は、昭和３４年（１９５９）の創業で、遍路を終えたほとんどの方は、
ここで名物の「打ち込みうどん」を食べ、遍路旅を振り返るそうです。打ち込みうどんは、味噌仕立ての汁
に自宅で採れた野菜などを入れてうどんと一緒に煮込むという栄養満点の郷土料理だそうです。
八十八庵では自家製白味噌の汁で地元のダイコンやニンジン、サトイモ、油揚げ、豚肉などを煮込んで
いるそうです。また、麺にはさぬきうどんのために開発されたこだわりの小麦「さぬきの夢」を使用している
ので、もちもちとして喉ごしのよい麺と白味噌が美味し井との評判なのでぜひ食べてみたかったです。
それから、創業時から継ぎ足している秘伝の出汁を吸った「おでん」は、セルフサービスでとうふ、
こんにゃく、厚揚げ、卵などから好きなものを選べるそうです。
中途半端な時間のせいかお店は閉まっていました。
山門を出て左手にある宿に向かいます。宿まではすぐです。
今夜の宿八十窪
この宿は１００％遍路の方が泊まる宿です。それも歩き遍路の方が大多数です。
宿についてまずは汗まみれになった服を選択です。その次に体の洗濯で入浴です。今日は暑くて汗
びっしょりになりましたので、しっかりを汗と汚れを流しました。
ほどなく食事となりました。この宿では夕食に結願のお祝いとして赤飯を出してくれます。私の地元では
赤飯はもち米なのですが、ここは普通のお米でした。北海道では甘納豆を入れるみたいですし、ところ
変わればいろいろあります。
宿の夕食
この日は我々を含めて宿泊者は５名。全員が結願者でした。
食事を済ませた後、次回の高野山と、別格２０寺の計画を話し合ってから部屋に戻った後、長かった
遍路旅について振り返りました。私自身で言えば５９歳で始めて現在６６歳です。途中で退職し（その後
再雇用等されましたが）、いろいろな意味で人生の一区切りとしてこの歩き遍路は良い思い出、良い
区切りともなりました。後から後から思い出は尽きません。
実は、遍路はまだ完結したわけではありません。「お礼参り」という行事があります。まずここから１番
霊山寺に再度詣でるのが習わしだそうです。
へんろみち保存協力会「四国遍路ひとり歩き同行二人」でもこの意味で「お礼参り」を紹介しています。
「円（縁）は繋がっているものだから。」という説もあります。１番霊山寺で販売されている最近の納経帳
には、８８番大窪寺の次に「満願御礼参拝 最初に参った寺」というページがあるものがあり、このような
お礼参りを認知した形になっています。（私のものにはありません。）
ただ、この習わしは昭和どころか戦後に始まったそうです。もう少し詳しく調べると、１９７０年代前半
までにはあまりなかったそうです。現在でも、８８番で結願して、道中使用した菅笠や金剛杖を奉納し、
そのまま帰宅の途につく人も少なくありません。
打ち始めのお寺へのお礼参りが一般化したから納経帳にもそれが反映されたのか、（納経帳の巧妙な
誘導？）がこうした習わしを普及させたのか、真相は不明です。このお礼参りについては、「１番霊山寺の
納経帳の『満願御礼参拝 最初に参った寺』というページは、納経料を２倍稼ぐ策略であって、そのような
お礼参りはまったく意味がない。」と主張する札所関係者もいるということです。確かに、歴史的・宗教的
な根拠は私が調べた範囲では何もなく、必要な行為ではないのかも知れません。しかし、歩き遍路に
とってはなかなか味のある趣向だと思います。（その理由の一つを、この後の１番霊山寺に再詣でした
箇所に書いています。）
事実、歩き遍路の方は行かれる方も多いそうです。確かに歩き遍路の場合、ここから高松方面に戻る
のにも結構距離を歩かないといけないですので。（バスがあるので、それに乗れば楽に戻れますが。）
「よし行ってみよう。」ということで明日と明後日の２日間を使い、１番霊山寺に向け出発です。
いろいろ考えている間に疲れたせいか、２０時過ぎには爆睡していました。
２日目
朝６時に起床。外を見ると雨です。これにはがっかりです。ですがお昼には上がるとの予報なので、
午前中には止むと思います。
７：００から朝食を出していただきましたので、ありがたくいただきました。
この宿もお遍路さんのためにやっているような宿なので、値段も安く対応も親切でした。
ちなみに、この宿の若女将さんはソフトボールの選手で、アテネと北京のオリンピックで金メダルを
取った方だそうです。
合羽を着て傘も差し、７：４０に宿を出発します。今日はひたすら次の宿まで歩く道のりになります。
実は、８８番大窪寺から１番霊山寺までの遍路道は、主に２通りのルートがあります。①は県境に
位置する長野集落から南に向かい徳島県へと入り、日開谷川に沿って南下して１０番切幡寺に出る
コースで約３８ｋｍ。②は、まっすぐに東へ進んで引田（ひけた）の集落に出て旧讃岐街道と合流。
そこから南に向かい大坂峠を越えて徳島県へ入り、３番金泉寺に出るコースで約４０ｋｍです。
①は歩く距離が２ｋｍ程短かく、峠越えもないので楽なのですが、１０番切幡寺から１番霊山寺まで
遍路道を逆走する事になります。その距離がかなり長く、なんとなくイマイチという感じがします。
一方で②は、途中から海沿いに出て香川県の東端から徳島県へと入ります。丁度四国の外周を
辿る道筋であり、まさに丸の文字を描く環状巡礼路にふさわしい道筋です。ということで、私達はこの
ルートを歩くことにしました。
実は日本人は①を通る方が多く、外国の方は②が多いそうです。
宿を出て、東方向に進みます。雨は小振りですが降り続いています。
宿を出てしばらくは車道を進みます。その先で国道３７７号線に合流した後、少し進んだところで右に
ぐるっと回る道に入り山の中へと入っていきます。分岐の所には道しるべにシールがあり、これなら
迷いません。
朝の山道というのは緑の匂いが濃く、実に清々しいです。ですが今日は草露で靴が濡れてしまいます。
東方向 山道への分岐点
しばらく山道を進むと標識があり、東かがわ市に入りました。傾斜のほとんどない山道を進みます。
丁石地蔵がいくつもありました。六丁（約６６０ｍ）となっていますので、距離から判断して、ここから大窪寺
までの距離をしめしているのだと思います。
市境の看板 丁石地蔵
この区間は遍路道ではないという方もいますが、しっかりと遍路道の標示や丁石地蔵がありました。
途中で石伝い式の橋で渓流を渡るなどなかなか楽しい道でした。
案内表示 丁石地蔵 飛び石式の橋
雨は降り続いています。周りはグリーン色ですが気分はブルーです。まだ１ｋｍほどしか歩いていま
せんが、既に靴はぐっしょり濡れています。
道を沢蟹が何匹も歩いていました。確か第３回の２１番太龍寺の時にも山の上の道にいました。
その先でまた国道３７７号に出ます。その先に面白い休憩所がありました。晴れていればよいかも
しれませんが、今日は雨で椅子が濡れてしまっていました。
面白い休憩所
国道の横に２９丁と書かれた丁石地蔵がありました。ということはここは旧遍路道なのでしょうか？
それとも丁石を移設したのでしょうか？
２９丁の丁石
８：４０に「長野いこいの家」という、はっきり言って１００円の野菜販売所に到着。一休みします。
雨は全く止む気配がありません。午前中はこの状態なのでしょうね。雨よりも合羽を着ているので
蒸し暑くてかないません。
すぐ先で国道から右に分岐する道に進みます。
更に２００ｍほど先が、先ほど記載した①と②のルートの分岐点になっています。
ここを左に進んで田圃の中の道を抜け、案内看板にしたがって進み、「八丁坂」を越えます。
①と②の分岐点 標石柱（文字は読めず）
前方に見える山を越えていきます。標高は３００ｍありますのでちょっと登ります。
ちなみに現在では国道を進み、五名トンネルを通る方が多いそうです。何せ半分以下の時間と数分の
一の体力消費で通り抜けられますから。
越える山 八丁坂への案内
その先で獣害防止用のフェンスを通ります。もちろんちゃんと閉めました。山道はいきなり急坂です。
ですが１００ｍほどでなだらかな坂に変わりホッとしました。
獣害防止用の柵 案内表示
その先で山間の水田と集落という日本の原風景のような景色がありました。
山間の水田と集落 八丁坂
「八丁坂」と呼ばれる古道には明治時代の道標がありました。「白鳥町まで三里（約１２ｋｍ）、三番札所
金泉寺まで七里（２８ｋｍ）」と書かれていました。「あれ、ちょっと距離が合わないのでは？」と思いました。
事前の調べでは宿から引田駅まで２４ｋｍ（現在地点からだと２０ｋｍくらい）のはずで、そこから３番
金泉寺まで１４ｋｍのはずですから。でも道標と実際の距離が合わないことにはもう慣れっこです。
それに、昔とは地名やルートも変わっているでしょうから。
ですが、こうした看板があるということはやはり１番まで歩く人が以前からいたということでしょうか？
「引田や少し北に行った三本松の港からは大阪までの船があり、四国の玄関口として栄えていた。」
という記述を読んだ記憶があります。
讃岐白鳥駅の近くにある興田寺は、四国遍路のお礼参りの寺として、多くの遍路者が訪れてにぎわって
いたとの話です。そうだとすれば昔は高松に戻るより、そちらに向かった方が便利だったのかもしれま
せん。いずれにせよ、道がちゃんと整備されていることが分かっただけでも十分です。
とは言うものの、やはり大窪寺からこちらに歩く遍路の人が少ないのか、八丁坂の入口には草が茂って
いて少し荒れた印象をうけました。しかしそれほど酷いという状況ではないので歩くのには差支えはあり
ませんでした。それよりも舗装路と違ってクッションがあり、膝や腰にはありがたいです。
八丁坂 石仏
９：１０に峠と思われるところに到着しました。何の表示もありませんが、ベンチがあり、ここから先は
下っていますのでここが峠だと思います。手前の１００ｍくらいはかなりの登り坂でした。なかなかに
登りごたえのある峠でした。
雨と汗で服はベタベタです。大窪寺からの距離は６ｋｍと表示されています。１時間半できましたので
良いペースです。
四国の道の標識 石碑？ 八丁坂
途中で一旦徳島県側に入り、また香川県に戻ります。道端にかなり年季の入った石仏がありました。
県境の標示 年季の入った石仏
眼下に集落が見えると、急降下して集落へと降ります。ここが境目の集落です。集落内には樹齢６００年
という「境目のイチョウ」があります。この木は、乳と呼ばれる気根が無数に垂れることから乳神として
信仰されてきたそうです。９：２０着。
この境目集落もその名の通り、徳島県と香川県の境に位置しています。
大イチョウの木 説明板
集落を抜け、東の中尾峠へと向かいます。ですが峠までは舗装路を歩きますので峠越という感じは
しませんでした。
ようやく雨も上がり、傘なしでも歩けるようになりました。集会所の軒下をお借りして傘とカッパの
上を脱ぎました。９：３０。
最後に降らなくてもよいのにと思いましたが、これが四国からのご挨拶なのでしょう。
その先の道端に最初は廃墟と思った遍路小屋がありました。
ようやく中尾峠に到着しました。９：４５。峠には看板が立てられ、右に分岐する道があり、こちらが
旧道です。
遍路小屋 中尾峠
右の道を進みます。こちらが近道という案内板がありました。峠のすぐ先に休憩所がありました。
ですが休憩せずに先に進みます。
案内板 休憩所
路肩に文化元年（１８０４）の遍路墓がありました。
峠からは未舗装の遍路道ですが道幅がかなり広いので、江戸期の歩行者用のものではなく、明治期の
馬車道かと思われます。傾斜も手ごろで歩きやすかったです。
途中で大きな溜池があったのですが大きな錦鯉がたくさん泳いでいました。誰かが放流したのでしょう。
実はこの後、３か所で同じように大きな錦鯉が群れている池がありました。
溜池の堰堤を横切り、境目集落からの舗装路と合流してそのまま峡谷に沿って続く道を歩きます。
こんな所を走る車はいないだろうと思っていたら、１台通過車両がいました。
道端に右下の写真の赤い鳥居がいくつもありました。不法投棄を防ぐためのもののようです。
林道 赤い鳥居
最初は鬱蒼とした木々に覆われていた道も、やがて周りが開けて人家がポツポツと見られるように
なってきました。
１件の家の横にロッカーがあり、これはお接待の品が入ったものでした。ジュースが入っていました。
ロッカー 中身
その先に石柱と標識などがまとまって設置されていました。これなら見落としませんね。
石柱や標識
その先では水田に水が張られ田植えがされていました。この辺りはかなり山の中に入った地域だと
思うのですが、きちんと田植えがされていました。休耕地は見かけませんでした。
山間の水田
白鳥温泉という施設に１０：２０に到着。ここは現在休業中です。営業していたらここに泊まることも
考えたと思います。ちょっと施設内に入ってみましたが、当然無人でした。少しだけ休憩してカッパの
下も脱ぎました。もう草むらを歩くことはないはずですので。先に進みます。
服は上下とも濡れています。歩きながら乾かすしかありません。
この辺りで大窪寺を出発してから約１０ｋｍほど歩きました。時刻は１０：３０になっています。快調な
ペースで歩けています。
１，５ｋｍほど進んだでしょうか？分岐点に到達です。１０：５０着。標識があり、ここから北東へ進むと
現在の東かがわ市の中心部である讃岐白鳥町、東に進むと引田へと辿り着きます。一方で北へ行く
道は三本松という港町に続いています。距離的には東の引田に向かうのが近く、北ルートは４ｋｍ以上
の遠回りになってしまうのでここは東に向かいます。
この分岐点から北に３００ｍほどで三宝寺というお寺がありますがパスしました。
そろそろ昼食にしたいのですが、座るところがありません。あてにしていた農家民宿がやっている
レストランも営業していません。実は宿から引田の駅前までお店が全くありません。
どうしようかと思っていたところ、Mさんが近くに「東かがわ鉄道博物館というものがあります。」
と調べてくれたので、そこに向かいました。１１：２０着。
入ってみるとC１１型蒸気機関車がありました。何よりありがたいのは椅子があったことです。
椅子に腰かけて宿でお接待で頂いたおにぎりをほおばりました。濃い目の塩味のおにぎりが何より
の御馳走・お接待です。
C11型蒸気機関車 動輪
小さいですがおにぎりを２つ食べたのでお腹も膨らみました。１１：４５に出発です。
国道３７７号線を１ｋｍ進むと、西山の集落で県道４０号線に入ります。ここでちょっと右手に分岐して
集落の中の道を歩きました。
少し前から日差しが差してきました。暑いです。むっとする暑さでたまりません。これが５月の気候で
しょうか？
その先で大きなため池がありました。宮奥池だそうです。堰堤に地蔵尊と不動明王？が祀られて
いました。このため池は文政２年（１８１９）の築堤だそうです。
溜池 地蔵尊
相変わらず蒸し暑いです。日差しも強く、日焼け止めを塗ったのですが、効果は少なそうです。
水を飲み干してしまい、道端の自販機で飲み物を買いました。
その先で田圃ではなく麦畑がありました。さすがはうどん県の香川県。しっかりと小麦も作っていました。
さらに進むと大きな石柱がありました。「右こんぴらしろとりの道」と書かれています。南に出て吉野川
沿いに琴平に向かうのでしょうか？
麦畑 石柱と説明板
道は緩い下り勾配です。小梅川沿いに進みます。今日は中尾峠を越えてからというもの、東屋は全く
ありませんでした。
ようやく高松自動車道が見えてきました。あそこを越えると引田の町に入ります。１３：３０。
高速をくぐる手前でIさんといったん別れます。Iさんは近くの日帰りの翼山温泉に立ち寄って宿に
向かいます。
私とMさんは引田の町はずれにある引田城跡を攻城します。まずは宿に向かいます。
ところが突然の雨。それも豪雨です。幸い近くにカルバートボックスがありましたのでそこで雨宿り
できました。１０分ほどで雨も上がり出発です。
町の手前にまた石柱がありました。大窪寺と金泉寺までの距離が書かれていましたが、下の方は
欠損していて読めませんでした。
石柱
１４：００にようやく町中に到着しました。さすがに２４ｋｍは長かったです。疲れました。ですが、かなりの
距離を歩いたのですが、札所がなかったので結構早く着きました。
今夜の宿、「お宿＆カフェバーもか」は駅の近くです。１４：０５に到着しました。
この宿は２０２４年１月にオープンしました。築６０年の民家をリノベーションしたもので、宿泊は歩きの
お遍路さんや海外からの観光客が多く、ランチやカフェバーは、地元の方に大好評だそうです。
実はこの宿のオーナーさんは２０歳の時から３年間スイスに留学し、帰国後は東京の旅行会社で働い
ていましたが、コロナ禍で仕事が激減。まとまった時間が出来たことを機に以前から興味があった
「歩き遍路」に挑み、４５日かけて四国を一周して結願。かけがえのない経験を通じて、「いつかは自分
で遍路宿をやってみたい」という夢を抱きます。その夢を実現させたのがこの宿だそうです。
そうした経緯のせいか、遍路者に対してとても親切でした。
おかげで遍路最後の宿となりましたが、とても気持ちよく過ごさせていただきました。
お宿＆カフェバーもか
時間も早いですので町中を観光しました。
この引田は近畿から最も近い讃岐国の港として重視され、また地形的に風が遮られる天然の良港で
あることから、古くより風待ちの港として栄えてきました。また引田は塩や砂糖の生産に加えて醤油の
醸造も盛んであり、江戸時代後期には廻船問屋や蔵元を営む豪商もいたそうです。
現在も中心街の通りには、江戸時代から明治時代にかけて築かれた醤油蔵や商家が密集して残って
いました。厨子二階の商家建築が並ぶ色鮮やかなベンガラ壁が続いています。
象徴的な建物が醤油蔵「かめびし屋」です。中を見学したかったのですが、開いていませんでした。
その近くの資料館では親切に案内をしていただきました。
町中に旧郵便局をカフェとして営業していました。なかなか良い試みだと思います。ただの記念館と
して保存しても経費が掛かるばかりですので、こうして気軽に中に入ってもらえる工夫をした方が良いと
思います。
旧郵便局のカフェ
その他にも歴史を感じさせる建物がありました。ですが、町自体は寂れているという感じでした。
古い町並み
それからこの香川県東かがわ市にある安戸池（あどいけ）はハマチ養殖発祥の地です。昭和３年
（１９２８）に野網和三郎氏がハマチの養殖を日本で初めて成功させました。
ここから歩いて１５分ほどの所に日本２百名城の引田城があります。もちろんMさんと一緒に攻城しま
した。山上からは海が眺められ良い城跡でした。
ちなみに、港から明日歩く大坂峠が見えました。
引田城跡のある小山 港から見える明日歩く大坂峠
お城の入口の看板
入口からは登山です。標高８２ｍとはいえ立派な山です。この城は歴史が古く、当初造られたのは
６世紀で、朝鮮式城郭だったそうです。確かに自然の地形を利用した造りになっていました。
その後改築がされたそうですが、石垣などは小規模だったようです。このため現在では城郭や石垣
はほとんど残っていませんでした。
登山道 石垣
引田港と集落
天守閣跡
その代りに景色は見事なものでした。海に浮かぶ城といった感じでした。
余談ですが、右下の写真の２つの島を覚えておいてください。明日の写真と比べていただくと移動した
様子がよくわかると思います。
淡路島も近くに見えていました。
展望所からの眺め
１時間ほどで攻城を終わり下山します。宿に戻る途中のスーパーマルナカでIさんと合流。お酒とつまみ
を買い込んで宿に戻ります。
帰る途中でJRの引田駅に立ち寄りました。ここは新しく建て直されていました。特急も停まるようですが
無人でした。
引田駅
宿に戻って入浴し、遍路最後の宿を味わいつつ、楽しく歓談しました。
実は靴がぐっしょり濡れてしまっていましたが、宿のオーナーのお母さんが親切に乾燥機を使って
乾かしていただきました。おかげで翌日快適に歩けました。感謝×３！です。
１８時から夕食となりました。夕食は家庭料理でしたが美味しかったです。
これで１泊２食で６千円です。安いです。お接待の精神なのかもしれませんが、経営が大丈夫か
心配してしまいます。
和三盆ラム酒を飲んでみました。実はここ引田は砂糖の生産でも有名です。その関係で造ったので
しょうか？味の方は本場のラム酒より薄めといった感じでした。
夕食 和三盆ラム酒
先程飲みすぎたせいか３人とも軽く１杯だけでした。買い出しをせずに、ここで飲めば良かったかも
しれません。反省です。
３日目
朝６時に起床。外を見てみると雲は多いものの晴れています。これは助かりました。実は今回は
天気予報がよくなくて、３日間とも雨ではないかと覚悟していましたので。
でも今日も暑くなりそうです。実は昨日は湿度９４％だったそうです。蒸し暑かったわけです。
食事をいただき、遍路最後の１日の旅に７：１０に出発。遍路開始です。
宿を出た後もお母さんはずっと見送ってくれていました。
余談ですが、引田駅は特急も停まるのでほぼ一時間に一本の列車があります。ここから徳島に列車
で移動して泊まるという選択肢もあったのですが、料金と特急運賃で２，５００円以上かかりますし、
徳島はもう何度も泊まりましたのでパスしました。
ちなみに、１番霊山寺のＪＲの最寄り駅は板東駅ですが、そこまで列車だとわずか３０分。歩くと５時間
はかかります。
宿から国道ではなく旧讃岐街道を進んでいくと、途中で写真のような建物がありました。水谷屋旅館
の看板がありますが、もう営業はされていないようです。さすがにここに泊まる気にはならないですね。
年季の入った建物
１ｋｍほど歩いたでしょうか？馬宿川に突き当たりました。ここからは国道１１号線を歩きます。
正面にはこれから越えていく大坂峠が見えています。あの峠を越えて徳島県に向かいます。これから
あの峠を越え無いといけないかと思うと足取りが重くなります。峠の最高地点の標高は３９０ｍ。現在
地点はほぼ０ｍですから。
大坂峠
国道は海岸寄りを通っていますので、海がすぐ近くに見えます。昨日引田城跡から見た２つの島が
すぐ横に見えています。
海岸の景色
馬宿川から１０分くらい歩いたでしょうか？独特な雰囲気の石畳が広がる建物がありました。ここは昔
ながらの製糖方法で和三盆を製造している三谷製糖の「羽根さぬき本舗」というお店です。三谷製糖は
創業文化元年（１８０４）の創業で、高松藩から最初に精糖業を許可された５軒のうちのひとつだそうです。
以来、現在までこの地で和三盆の製造をずっと続けてきたとのことで、お店では和三盆を使った和菓子
を購入することができます。遍路のお土産に購入しようかとも思いましたが、さすがにこの時間では営業
していませんでした。
ちなみに昨晩飲んだ和三盆ラム酒もここの商品です。
その先に讃岐相生駅がありました。７：４５。ここも無人駅で駅舎は昔のものでした。ここは香川県
最東端の駅です。こうして遍路に来なければ、多分一生来ることはなかったでしょう。立ち寄ると、
プラットホームからも大坂峠が見えていました。駅を出たすぐ先で線路が登り始めていました。
讃岐相生駅 説明板
引田からここまでの旧讃岐街道沿いには住宅が並んでいましたが、この辺りからは田圃が周りに増え
てきました。
海沿いの道から右に入り、大坂峠へ向かう県道１号線に入ります。
県道への分岐 大坂峠
すぐに旧道との分岐があり、そちらに進みます。県道は九十九折れの道で曲がりくねっています。
旧道はショートカットしていますので距離はかなり短くなります。
そのすぐ先に左右へ分岐する道標がありました。道標には「右 おおさかごへ 一ばん四り半 三ばん
より逆に」「左 うたつごへ 一ばんへ三り余 大麻宮をへて」と刻まれていました。現代語に訳すと、
「右の道は、大坂峠を越えて３番札所から逆打ちして1番札所まで４里半（約１８ｋｍ）、左の道は卯辰峠
を越えて大麻比古神社を経由して１番札所まで３里（約１２ｋｍ）余り」ということです。
大坂峠越は東かがわ市坂元と徳島県板野町を結ぶ阿讃の国境の峠道で、香川県側では「阿波街道」
徳島県側では「讃岐街道」と呼ばれているそうです。昭和３４年（１９５９）に海岸沿いに国道１１号線が
開通するまで、この峠道が香川県と徳島県を結ぶ主要道路だったそうです。
私の推測ですが、かつての遍路の人達もこの峠道を利用していたのではないかと思います。より多く
の人々が往来する幹線道路を通るのが普通ですから。遍路地図を見ると未舗装のさらに古い時代の
古道も残っているようです。
左の卯辰峠は大坂峠よりさらに東にある峠であり、これを越えれば霊山寺や大麻比古神社がある
谷筋に直接出られるようです。遍路道を逆走する必要がないルートなのでそちらの方がルート的には
環状巡礼路にふさわしいと思うのですが、残念ながら現在の卯辰峠の旧道はほとんど人が通って
いない道になっていて、新しく造られた車道を通るしかないそうです。
ということで、私達は右の大坂峠越えの道を歩くことにしました。ここまでくると大坂峠はもう目の前です。
分岐の道標と標識 標識
右の道に進み、JR高徳線の線路を狭いボックスカルバートで潜って大坂峠へ入る遍路道に入って
いきます。大坂峠へと向かうこの道は、道幅が広く歩きやすいです。国道や県道が整備される前は、
峠越えの主要道路として馬や牛が車を引いて通れるよう改修されたのだそうです。当時は多くの人が
往来した道だったようですが、今は道の広さだけがその証として残っているだけで、行きかう人はあり
ません。おそらく今歩いているのは歩き遍路の人だけでしょうね。
峠の入口に８：０５に到着。峠越の旧道は竹藪の中を抜ける所から始まります。すぐ先で雑木林の
中の道になります。
大坂峠入口 旧道
もうすでに暑いです。上着を脱いでTシャツ姿になっています。山道なので虫よけに上着を着ていた
いのですが、暑くて無理です。
道の傍らには石仏が鎮座していますが、傾斜も大した事なくなだらかです。所々には石畳の跡があり
ます。道幅も広く、階段や急な箇所もほとんどありません。この道は江戸時代以前の古道ではなく、
近代に築かれた旧道なのでしょう。
丁石地蔵 四国の道の道標 石畳の道
そう話ながら歩いていると、８：１５に１回目の県道との交差地点に到着。「大坂峠みちの移り変わり」
という案内板が立てられており、今歩いているこの道は明治８年（１８７５）に完成した馬車道であると
記されていました。明治７年から工事を始めてわずか２年でこの道を造り上げたのですね。そのことが
この道の重要性を表しています。
これによって歩荷という人が担いで荷物を運んでいた時代から大八車（荷車）で荷物を運べる時代
に変わったのです。各段に効率が上がり、物資や人の交流も増えたのでしょうね。
その時に造られた石畳も数か所残っていました。
説明板 旧道
それより古い江戸時代以前の古道は谷間の沢沿いを通っていたようですが、現在は通行不能になって
いるようです。その古道と思われる道跡が見受けられました。
一応それらしい道筋を確認できましたが、すでに獣道のようになっていました。これが本当に旧讃岐
街道なのかは不明です。たとえ本物だとしてもとても通る気にはなりませんでした。
ちなみにですが、大正５年（１９１６）に先程少しだけ歩いた県道１号線がここに造られています。本当に
重要な道だったのですね。
すぐ先でまた県道と交差します。右下に高速道路があります。今も昔もここは重要なルートなのですね。
途中で景色が開けて海岸線が一望できる場所がありました。朝見た２つの島がこの角度になっています。
海を見下ろす景色
ところどころに四国のみちの道標があります。一本道なので迷う心配はないのですが、やはり道しるべ
があると安心できます。
傾斜こそ緩やかなのですがずっと登り続けます。道が真直ぐに続く箇所がありましたが、先を見る
だけで足取りが重くなりました。
暑いです。首にタオルを巻き、汗を拭きながら歩きます。今日も湿度は高いのでしょう。
馬車道とは言っても登っていくにつれて傾斜が急になってきました。歩く人が少ないせいか、落ち葉が
堆積しており足が滑りやすいです。その分フカフカで膝に負担がかからなくて良いのですが、馬車が通る
なだらかな道なので楽勝かと油断していましたが、最後にやられてしまいました。
路傍には石仏が並び往時をしのばせるています。県境の手前には、少しファンキーな地蔵尊があり
ました。明治８年に建立されたものらしいのですが、当時としては斬新なものだったでしょうね。
林の中に鹿がいたそうですが、私は見られませんでした。
石畳の道 ファンキーな地蔵尊 標識
宿を出発してから１時間４０分、香川県と徳島県の県境に着きました。８：５０。
山頂を越える
県境が峠かと思っていましたが、ここからもまだまだ登りは続きました。実は旧道は山頂の所の少し
先から下っているのですが、そちらは現在は通行止めになっていました。右手の階段を登るように
なっています。ということでここが峠で間違いないようです。
もう登ることはないと思っていましたがそれほど甘くありませんでした。しばらく登り道が続きます。
蒸し暑いです。昨日の午前中の雨のせいでしょうか、湿度はかなり高そうです。
登りが続く
県境から登ること約１０分で「県境０，８ｋｍ」と書かれた道標がありました。９：０５。
この道標を境に下り坂になります。ここが現在の道の峠のようです。ここから右に分岐している道が
あり、「展望所まで２００ｍ」と書かれていました。ですが行く気にはなりませんでした。
ここまでの間にもツツジの木が何本かありましたが、すでに散っていました。地面に残骸が落ちて
います。
峠で一休みしますが、残念ながらここからは眺望は全くありません。５分ほど休んで先に進みます。
峠からはひたすら下ります。この区間は新しく造られた道で幅も狭く、階段状になったところもあり、
結構急な下りでした。
途中で県道を横切ります。ここで一休みです。９：２０。その県道には鳴門市の標示がある看板も
ありました。この付近は県境沿いに歩いているので両方の県を行ったり来たりしています。
この県道を通る車などいないと思っていたら、わずかな休憩時間の間に３台を通過していきました。
おまけでサイクリングの方もいました。
狭い道
道は整備されていて、標識もしっかりとありますが、景色は全くなく、ただひたすら降りるだけの道は
正直つまらないです。おまけに暑いです。汗が流れ落ちます。
標識
整備された道
更に２０分ほど下ったところで山道を抜け、いきなり集落の横に出ました。ようやく下山したようです。
９：４５に到着。なかなか歩きごたえがありました。
下山口
下山口のすぐ先に「大坂口番所の跡」があります。
この大坂口番所は江戸時代に徳島藩によって設けられたもので、村瀬家がその業務を執り行っていた
そうです。江戸時代は人の移動が厳格に制限されており、武士は各藩が発行する通行手形を、庶民の
場合は庄屋や檀那寺、地方役人が発行する往来手形を持っていないと通行することはできなかった
そうです。（お伊勢参りなどは大目に見られていたそうです。）
大坂口番所の跡
箱根峠など、江戸に近い幕府の関所では「入鉄砲に出女」の取り締まりを行っていましたが、ここでは
「入邪宗門に出百姓」と、邪宗門（キリシタン）の入国と百姓の逃亡を防ぐ為の取り締まりが行われていた
そうです。番所にはキリシタン禁教の高札が掲げられると共に、踏み絵が行われていたそうです。
番所跡には村瀬家に伝わる踏み絵のレプリカがあるそうなので見てみたかったのですが、まだ開いて
いませんでした。他の方のブログの情報によると、「十字架はともかく、その横の人物像（宣教師？）は
かなり適当で、踏み絵としての効果があまりないような気がする。もっと絵の上手い人に作成を頼む
べきだったのでは？」と書かれていました。写真も見ましたが確かにその通りでした。
案外この踏み絵は形式上だけのパフォーマンスに過ぎなかったのかも？といろいろ想像を巡らせて
しまいました。
番所跡のある東谷集落から１０分ほどで県道１６４号線に出ました。「３番金泉寺まで５，３ｋｍ」の
標示がありました。後１時間半くらいですね。
標識
JR高徳線の線路に沿って谷間を進むと阿波大宮駅に着きました。１０：００。駅名が讃岐から阿波に
変わっています。
阿波大宮駅
先程の讃岐相生駅から一駅なのですが、徒歩で２時間１５分を要しました。お腹の調子が良くなく、
駅のトイレをお借りしました。軽く休憩します。自販機で買ったお茶を一気に飲み干しました。
一息入れて先に進みます。
駅から５分ほどで県道１号線と合流。そこから１５分くらい進んでJR線をくぐった先に「あせび温泉
安らぎの里」があります。１１：００からのオープンなのでまだ少し早いですが、すでに２０台以上の
車が停まっています。
ここで入浴も考えましたが、まだこれから８ｋｍほど歩かないといけません。汗を流してもまた汗を
かいてしまいますので、パスしました。お隣に中華そばの店もありますが、もう少し我慢して金泉寺
近くのうどん屋に立ち寄る予定です。
谷間を抜け、高速道をくぐると周りの風景が畑の中から住宅街にと変わります。道端にある案内の
３番金泉寺への残り距離がどんどん減っていきます。
町中を進んでいくと見覚えのある楼門があります。
出発から３時間４５分、県境から約２時間、３番金泉寺に到着しました。１１：０５。
いやはや、８８番からの４０ｋｍは長かったです。
このお寺に来たのはもう６年半も前、懐かしいを通り越してほとんど記憶に残っていません。
この金泉寺からは遍路道を逆打ちすることになるのですが、せっかくなので参拝していくことに
しました。無事歩き通すことができたお礼参りをさせて頂こうとおもいます。御朱印は頂きませんが。
実はその時は山門での記念写真を撮っただけで寺の中は１枚も撮っていませんでした。（その時の
HPの容量が小さかったため、枚数を載せられなかったので写真は少なかったです。）
今回はしっかりと撮影しましたので載せておきます。
山門は仁王門です。ここの仁王像はどことなくアニメチックなお姿でした。それから、この山門には
大草履の奉納がありませんでした。記憶をたどってみると、徳島県内の山門には大草履がほとんど
なかった気がします。
山門 仁王像
山門をくぐった先に赤い欄干の橋があります。特に川があるわけではないのですが、結界を表して
いるようです。その先に境内があります。（ここも境内の一部ではありますが。）
橋を渡って境内へ
橋を渡った右側に手水舎と鐘楼があります。境内は広く正方形の、広場のような感じです。
手水舎と鐘楼
参道の真直ぐ先に本堂があり、その右側に大師堂があります。反対の左には護摩堂があります。
本堂と左奥が護摩堂 大師堂
大師堂の右側には、なかなか凝った造りの不動明王像がありました。
大師堂の対面には観音堂がありました。
不動明王像 観音堂
その観音堂の左奥には「黄金地蔵尊」と呼ばれる地蔵堂があります。この中には井戸があり、覗いて
自分の影がはっきり映れば長寿、ぼやけていると短命という言い伝えがあります。覗いてみたところ、
しっかりと映ってくれました。
黄金地蔵
ちなみに、源義経が平家追討の命を受け、讃岐国屋島に向かう途中（寿永４年：１１８５）、この金泉寺
に立ち寄り、戦勝開運の祈願をしたと「源平盛衰記」に伝えられています。その時、家来の弁慶が巨石
を持ち上げたと伝えられています。境内西隣にその「弁慶石」があります。写真は撮り忘れましたが、
実物は、「これは人間が持ち上げられないでしょう。」という大きさでした。
参拝をして山門をくぐり１番霊山寺に向かいます。
門から５０ｍほど歩いた所に記憶に残っている看板と中務茂兵衛（なかつかさもへえ）の設置した
道しるべ（遍路石）です。前回ここを通った時はこれを目印にここを右折して４番に向かったのでした。
今日は左折して２番極楽寺の方に進みます。
案内看板と中務茂兵衛のへんろ石
ですがここで昼食タイムです。近くにあるうどん屋「こんせん」に向きます。ほんの５分ほどで到着。
まだ１２時前なのですが、駐車場は満車、店内は満席でした。丁度食べ終わった方がいて、すぐに
座れました。
このお店の出汁は濃い目で私好みです。おでんもうどんも美味しかったです。
うどん屋こんせんのおでんとかけうどん
私たちが店を出る時には外に列ができていました。
ここで四国ならではの、うどん屋のはしごです。少し戻ることになりますが、近くにあるもう１件に入り
ました。「西山製麺」です。こちらも満員で少し待ちましたが、１０分かからずに入店しました。こちらも
続々と並び始めていました。
このお店の出汁は少し薄めでした。でも美味しかったです。個人の意見ですが、うどんはつけ麺よりも
かけの方が良いですね。
うどん屋西山製麺のおでんと冷うどん
お店を出て２番極楽寺方面に向かいます。途中で私の趣味の駅巡りで、板野駅に立ち寄りました。
板野駅
１２；３０に先程の標識の所まで戻って、遍路道を逆打ちで進みます。先程の３番金泉寺にでは数名
の遍路の方と会いましたが、実はこの後１番霊山寺までの遍路路では全くすれ違いませんでした。
同じ方向に歩いていた方が１名いただけでした。日曜日の午後という時間のせいかもしれません。
あるいは歩き遍路の人が少ないのかもです。
３番金泉寺から５分程歩いたでしょうか？左側に記憶に残っている石の道があります。これは
順打ちでショートカットして金泉寺に行く道です。この道は歩いた記憶があります。
全体的に当時の記憶は薄れてしまっているのですが、所々で記憶がよみがえります。
ショートカットして３番金泉寺に行く道
さらに進んだところのカーブミラーに「逆打ち」と書かれたテープがありました。初めて見たのではないか
と思います。８８番を打った後この先の１番まで戻る場合、ここを通りますので、その人達用かもしれません。
その先でまた私の趣味の駅訪問。今度は阿波川端駅に立ち寄りました。
逆打ちと書かれた青いテープ 阿波川端駅
さらに５分ほど進んだところに大きな石柱門がありました。１３：１０。これは２番極楽寺の一の門です。
この石門も覚えていました。この後、２番極楽寺には立ち寄らずに１番に向かいます。
２番極楽寺の一の門
坂東谷川を渡るとあと少しです。
「四国第一」と書かれた石柱を見つけました。真直ぐ先にお寺が見えています。実は前回は１番を
打った後にここに来ました。高速バスで来たため、ルートの都合でそうなりました。JR板東駅から
歩いてくると先にここに来れます。
ようやく１番霊山寺に到着。１３：２０。門前に立つと、初めてこの寺に来た時から始まった四国１周
の思い出が走馬灯の如くよみがえります。
山門の横に、一番最初に立ち寄ったお遍路用品の店があります。ここで納経帳と納札を買いました。
四国第一と書かれた石柱
山門は仁王門です。仁王像と大草鞋が出迎えてくれました。気のせいか仁王様が「よく頑張った。」と
声をかけてくれたような気がしました。
山門 仁王像と大草鞋
山門をくぐり境内に入ります。境内の真ん中に池があり、参道は橋で池を渡ります。右手の、池の先
に大師堂があります。
参道の左側には多宝塔と鐘楼がありました。〆に突かせていただきました。
境内の池と大師堂 多宝塔 鐘楼
本堂は正面の一番奥に隠れるようにあります。本堂内部の照明はろうそくや提灯で幻想的な雰囲気
でした。この情景は全く記憶に残っていませんでした。私だけでなくIさんやMさんも同じなのでひょっと
して前回来た時には違っていたのかもです。
本堂 本堂内部
この寺の境内には人がいっぱいです。門前のお店にもたくさんいました。納経帳や白衣などを買って
いる、これからお遍路を始める人たちが初々しく見えました。私達も６年半前にはあの姿だったので
しょうね。
IさんとMさんとがっちりと握手をして、苦労とそれを上回る感激をたたえ合いました。
最後の巡拝を終え、四国八十八ヶ所巡礼の旅が終わったという実感が込み上げてきました。通算
歩行距離約１，２００ｋｍを、いろいろありましたが足掛け６年半で大きなトラブルもなく無事歩き通せた
という満足感が込み上げてきました。「やっと終わった。やり遂げた。」という気持ちと、「終わって
しまった。」いう気持ちが複雑に絡み合っています。
霊山寺の境内で、真新しい白装束に身を包んで緊張した面持ちで歩き始める新米？遍路さんは、
まさしく打ち始めた時の自分自身の姿であり、この姿を見た時、改めて歩き遍路を終えたのだと感じ
ました。８８番のあと、１番に戻ることについてはいろいろ意見があり、それは個人が決めればよいこと
です。ですので個人の意見として書かせていただくと、「１番霊山寺でこれから遍路を始める人の姿を
みることで、自分の遍路の終わりを悟れた。」と思います。歩き遍路であれば、できれば１番まで歩くこと
お勧めします。御朱印をもらわなければお寺での費用は掛かりませんので。お賽銭は気持ちですから。
最後の納経を終え、３人で顔を見合わせ、「お疲れさまでした。」と声を掛け合いました。本当に長い
６年半でした。間違いなく言えることは一人だったら歩き遍路での結願はできなかったと思います。
これで四国遍路は完全に終わることができました。満足して霊山寺の山門を出ました。
実はまだ一つ残っています。高野山へのお礼参りです。高野山は説明不要、その高野山の
金剛峯寺奥ノ院で弘法大師様が今も祈り続けておられるそうです。そこへお礼参りに出かけます。
でもそれは後日の事。今日は我が家に戻ります。
さらにおまけですが、四国内には別格２０寺も残っています。こちらはさすがに車で回る予定なのです
が、門前町のお店でその納経帳を売っていましたので購入しました。
お寺を出てバス停に向かいます。高速道ををくぐったところに実に大きな赤い鳥居がありました。
大麻比古神社の鳥居です。１番霊山寺の奥の院だそうです。立ち寄りたかったのですが、本殿は何と
１ｋｍ先なのでそうです。諦めました。
大麻比古神社の鳥居
余談ですが、この近くには「坂東俘虜収容所」という施設があります。第一次世界大戦の時にドイツ
の捕虜を収容していました。
ちなみに、日本で初めてベートーベンの交響曲第九が歌われた、第九日本発演の地です。
板東俘虜収容所で過ごしたドイツ兵たちの様子や地域の人々との交流を展示したドイツ館、道の駅
の物産館があります。時間があれば立ち寄りたかったのですが、残念ながらパスしました。
１ｋｍほど歩いて高速バスの鳴門西PA内のBSに向かいます。ここは第１回の時に下車して１番霊山寺
に向かって歩き出した所です。いわば四国遍路始まりの地です。ここで歩き終わることができてよかった
です。ですが階段を結構登らなくてはなりませんでした。最後の最後まで修行です。１４：０５着。
高速バスに乗り、明石海峡大橋を渡り本州へ。無事に三宮駅に到着。ここからJRと新幹線を乗り継い
で帰路につきました。
