参加メンバー　　私　Ｍさん　Ｉさん　弘法大師様　　同行４人

　四国八十八カ所歩き遍路第二回目の旅です。

　今回は、前回と一変して山登りの遍路道となりました。１１番藤井寺から１２番焼山寺への道は

「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」と言われるほど、遍路道の中でも指折りの難所で、遍路ころがし

との異名のある場所です。（ちなみに、二のお鶴は２０番の鶴林寺、三の太龍は２１番の太龍寺の

事です。こちらは次回第三回の旅で挑みます。）

　さて、どのような顛末となりましたか？お読みください。


　　　　　　　　　　　　　　　　歩行距離　　　累計距離

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　３７．２ｋｍ
１１番　藤井寺
　　　↓　　　　　　　　　　　１２．９ｋｍ　　　５０．１ｋｍ
１２番　焼山寺
　　　↓　　　　　　　　　　　２０．８ｋｍ　　　７０．９ｋｍ
１３番　大日寺
　　　↓　　　　　　　　　　　　２．３ｋｍ　　　７３．２ｋｍ
１４番　常楽寺
　　　↓　　　　　　　　　　　　０．８ｋｍ　　　７４．０ｋｍ
１５番　国分寺
　　　↓　　　　　　　　　　　　１．８ｋｍ　　　７５．８ｋｍ
１６番　観音寺
　

　１日目

　第二回目は前回巡拝した１１番藤井寺からになります。

　今回も同行者は、弘法大師とＭさんとＩさんの同行四人です。

　まずは四国まで移動しないといけません。区切り打ちはこの往復の時間がネックの一つです。

会社勤めの身ではやむを得ません。

　今回は、大阪から和歌山に向かい、フェリーで徳島入りとしました。初日は行程上、１１番藤井寺

の近くの旅館まで行くだけです。せっかくなので和歌山観光も含めてとなりました。遍路と関係ない

ので詳細は省略しますが、和歌山ラーメンも美味しかったです。和歌山城ではこの時期に紅葉を

楽しめました。

　それから和歌山から徳島の船の旅はなかなか快適でした。八十八札所を全て巡拝し、結願した後は、

ここを逆に船で渡り、高野山に向かうことになりますので、その下見を兼ねています。

　徳島港から徳島駅まで、電車の時間の関係もありタクシーを使いました。フェリーをダッシュで降り

て、タクシーに乗り込み、ギリギリで間に合い、徳島駅を出発、鴨島駅まで移動します。

　ここまでは快調だぅたのですが、車窓に雨粒が・・。なんと雨が降ってきました。降水確率０％の

天気予報だったのに・・。

　どうしようかと思っていた時に、今夜の宿の方から電話があり、駅まで迎えに来ていただけることに

なりました。お遍路情報で、この宿は非常に評判の良い宿ですが、その通りでした。何よりご主人の

人柄が最高でした。

　１７：３０に今夜の宿「旅館吉野」に到着。入浴の後、夕食を食べながら軽く１杯。同宿者は女性の

一人旅の方のみでした。私たちと同じ行程で、明日は焼山寺に向かうそうです。

　ちなみにですが、旅館吉野は建物は新しくて設備も整っていました。ここから１１番藤井寺までは

１０分ほど。そこから１２番焼山寺への道が始まりますので便利な宿です。歩き遍路には特に。でも、

さすがに１２月半ばでは空いていました。



　　　　　　　　　　旅館吉野

　夕食後に地元徳島のお酒を飲み、早めに就寝。


　２日目

　２１：００に就寝したので、全員が５：３０には起床。６：００から朝食。味、量とも満足でした。

３００円で昼食用のおにぎりを作って頂けます。今日のルートには飲食店がないので助かります。

　６：４５に薄明るくなった中をスタート。天気予報では晴れのはずが、空を雲が覆っています。でも、

雨の心配はなさそうです。

　歩き始めるとようやく日が昇ってきました。１０分程で１１番藤井寺に到着。ここは前回巡拝して

いますので先に進みます。

　本堂の左横に１２番焼山寺へと続く、遍路ころがしの山道の入口があります。靴の紐を締め直し、

登山開始です。いえ、遍路開始です。７：００発。

　ここが最難関と言われる訳は、１３ｋｍ近い距離よりも、標高差が問題だと思います。焼山寺は

山の８合目付近、標高７００ｍにあるのですが、手前で一旦下って登り返すを２回繰り返すため、

実際の高低差は１，１００ｍを超えます。これは、登山で北アルプスの穂高の山に登るときの

標高差１，５００ｍに近いものです。

　アルプスに登るならばそれなりの装備と覚悟で登りますが、遍路路の一部として考えるとかなり

厳しく、１番から１１番までの道とは全く違った世界なので、甘い気持ちで入り込むと、ころがって

しまうのでしょう。

　もう一つは通しで歩く場合、ここが３日目になり、疲れや足のまめなど負傷が現れ始めて、体が

きつくなってくるからだからだと思います。

　１１番藤井寺の本堂の左に「焼山寺みち」の道しるべがあり、焼山寺への起点となっています。

「焼山寺まで１２．３ｋｍ」の標識があります。



　　　　　焼山寺への道の入り口　　　　　　　　　　　　　藤井寺八十八ヶ所の案内看板

　登り始めからいきなりきつい登りです。道沿いにいろいろな形の道しるべがあります。

　１５分で林道に到着。道しるべとベンチがあります。遠くで電車の通過音が聞こえます。昨日乗って

きた徳島本線を走る電車でしょう。



　　　　　　　　　道標とベンチ

　７：２５に端山休憩所に着きました。ここで一息入れます。さすがに１２月半ばの午前８時前なので、

暑さは感じません。まだ汗もかいていません。振り返ると北方向に阿讃山脈が一望できます。その手前

には吉野川の流れがあります。東北方向には淡路島がぼんやりと見えています。

　このあたりの道には落ち葉がぎっしりと積もっています。全部落ちているのかと思いきや、まだかなりの

紅葉が残っていました。十分に紅葉を楽しめます。



　　　　　落ち葉の遍路道

　ここで後続の方に抜かれました。装備から判断してトレランの方です。軽装で早足で過ぎ去って

いきました。

　８：００に水大師に着きました。名前の通り水場で、量は少ないですが、水が流れ出ています。

　さらに登ること４０分で、最初のポイント長戸庵（標高４４０ｍ） に到着。竹藪の中に名前の通り

庵が建っています。ここでも休憩。うっすらと汗が滲んできました。ここで上着を脱ぎます。



　　　　　　　　　　　長戸庵

　庵の周囲を銀杏の木が囲んでいます。道は、黄色の絨毯が敷き詰められていて綺麗です。

　奥にトイレがあるのですが、「女性の小専用」と書かれています。男性は先の柳水庵に行くように

と書かれていました。ここから先は、しばらくの間見晴らしの良いなだらかな尾根筋の道です。

　長戸庵から５分くらいの所に眺めの良いところがあります。ここが山中から阿讃山地を見られる

最後の場所になります。



　　　　　阿讃山地、手前は吉野川

　尾根道は快調に歩けます。所々に登りの箇所もありますが、問題なく快調に歩けます。「藤井寺

まで５．２ｋｍ」の看板の所からは林道に合流し、さらに快調に歩けます。

　その先は急降下の下り坂。ですがそれほど距離はなく、１０分かからずに下り切りだらかな道となり

９：１５に柳水庵（標高５００ｍ）へ到着します。この区間はかなり早いペースで歩けました。ここが今日

の中間点となります。藤井寺から６．３ｋｍ来ました。

　この区間は約３ｋｍごとに休憩ポイントがあり、ペース配分がやり易くて助かりました。

　ここの境内には庵の謂れとなっている「柳の水」と呼ばれる井戸があります。喉を潤します。この

コースは水には困らないです。境内にはトイレもありますのでありがたく使わせていただきました。

年を取るとトイレが近くなって困ります。ちなみにここは番外霊場でもあります。

　一息入れた後、出発です。境内を出ると、まずは下りです。下り坂の途中に遍路小屋があります。

結構しっかりとした作りで、シュラフ等があれば十分寝泊まりできます。（注意書きに「体調不良等

の方以外は宿泊しないでください。」と書かれていました。

　すぐ先で林道になり、１ｋｍ位歩くと山道に入り、そしてまた林道、また山道と交互に繰り返します。

その次に杉林の中に入った所から急な登り始まります。登りは長く、３回ほど小休止をして

約１時間近く登り続けました。

　ようやく正面に大きな一本杉の巨木が見えてきました。あそこが一本杉庵（元々は浄蓮庵という

名前で、一本杉が有名な為、こう呼ばれています。（標高７４５ｍ））ようやく着いたようです。

　石柱が２本立っていて石段があり、その先の一本杉の下に大きなお大師様の銅像があります。

　時刻は１０：１０。予定より２０分ほど早く着きました。ほっと一息です。



　　　　　　　　　　　一本杉庵への階段と弘法大師像

　石段を登った所に弘法大師の像とその先に庵があります。少し早いですが、ここでおにぎりを１個

食べます。シャリバテ防止です。庵の周辺はひっそりとしていて、さすがにこの時期は他の人影は

ありません。

　１０分ほど休憩して先に進みます。前方に焼山寺の寺楼らしきものが見えていて、かなり近づいて

きたと実感がわきます。普通は「もうひと頑張りすれば着ける。」とやる気が出てくるのですが、でも、

ここでもまたそのやる気が失せる事が。それはここから約３００ｍの下り。「せっかく登ったのに・・・。

もったいない」とまた愚痴が出てしまいます。そのうえ、下った分をまた登る返すのですから。

　でも進まないと、いつまでたっても着けません。歩き始めます。

　１０：５０に左右内の集落に到着。集落内の道を通り抜けて、左右内川に架かる橋を渡ります。

橋の途中で正面の山を見上げます。今度は標高差３７０mの登りです。なんだか去年登った南アル

プスの山を思い出します。

　ただひたすら急登を登ります。一丁ごとの丁石（昔の道しるべ）が目印になります。（※一丁は１０８m）

初めは地蔵タイプの形でしたが、途中の１１丁の道しるべは四角い角柱でした。「あれ、どこからこの

四角い形になった？」と、つい途中のものを見落としていました。道しるべには「あと１．２ｋｍ」と表示

されています。正直、「まだ１．２ｋｍも登りがあるのか・・・。」と思いました。



　　　　　　　　　　地蔵タイプ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　角柱タイプ

　ここでも後続の方に抜かれました。こちらもトレランの方です。同じく軽装で、早足で過ぎ去って

いきました。

　今度は文政３年（１８２１年）に置かれた道標を見つけました。この周辺は約１．９ｋｍの区間が

「国指定史跡』の遍路道に指定されています。全線にわたり 古道の景観をとどめる山中の道で、

丁石の道標や遍路墓などが数多く建ち並ぶ、阿波の遍路道で最も濃密に石造物が残る道だそう

です。でもそんなことは関係なく、この登り道は疲れます。せめて何か気を紛らわす物がないと、

他に何もない杉林の中の登り道は大変です。

　登ること約３０分で水平？な車道のような幅の広い林道になりました。１１：２０着。ようやく登り

切ったようです。「焼山寺迄１ｋｍ」の看板があります。 焼山寺はもうすぐです。



　　　　　　　　　　　道標

　１１：３５に参道の端にたどり着きました。「本堂迄４６４ｍ」と書かれています。山頂にある「奥の院

迄１，４３０ｍ」となっていますが、こちらはパスさせていただきたいと思います。

　後方には駐車場もあり、数台の車とすれ違いました。参道には「ご苦労様」という看板があります。

車で来た方には、この言葉の本当の意味は分からないでしょう。



　　　　　　　　　桟道入口

　参道は山の斜面を巻くように作られています。山側には石仏が、反対側には石柱が並んでいます。

参道の途中から遠く阿波の海が遠望できます。

　この寺の周囲の雰囲気は、里山の寺とはずいぶん違います。最後に砂利道と杉の大木の中を通り

１２番焼山寺の仁王門に到着しました。１１：４５。



　　　　　　　　　　　仁王門　　　　　　　　　　　　　　　　　　　杉の大木の立つ境内

　門で一礼してくぐり、しばらく進むと階段が見えて来ました。見上げると、大きな杉の木の前に

弘法大師像が建っています。杉の枝が、まるで弘法大師の後光のように見えています。

　境内には樹齢３百年の杉の巨木（県の天然記念物）が林立しています。標高７００ｍの山腹に

ある焼山寺境内には売店があるのですが、営業時間は３〜５月と、９〜１１月、朝１０時頃から１４時

頃まで。定休日は水曜。なので１２月の今日はお休みです。ちなみにメニューのうどんは２００円だ

そうです。食べてみたかったです。

　まずは巡拝です。今日は蝋燭とお線香を用意してきましたので、お作法の通り献灯しました。

お札を収めて納経帳に御朱印をいただきます。さすがに約５時間の登山はきつかったです。

でも満足感もひとしおです。休憩所でおにぎりを食べて一休みです。他に２組ほど参拝の方が

みえましたが、境内は静かで荘厳な雰囲気に包まれていました。

　さすがに標高７００ｍの山中は寒いです。今日は上着を着たり脱いだりの繰り返しです。

　境内からは四国山地の山並みが一望できます。もちろん車でも来られるのですが、昔の方と同じ

ように歩いて登ったほうが感動が違うと思います。登山で山頂に着いた時と同じ充実感があります。

　寺を出て今夜の宿に向かいます。１２：０５発。こんなに早い時間に宿へ？と思われるかもしれま

せんが、次の１３番大日寺までは約２０ｋｍ。ここまで登ってきた山を下る道のため、今日中に着く

のはとても無理。途中で泊まらないといけません。遍路道沿いにも宿はあるのですが、今日は少し

寄り道となりますが、神山温泉に泊まります。そこへ行くにはバスに乗るのですが、１日３本のみ。

１３：１５発のバスに乗れるように、バス停のある鍋岩の集落まで３．４ｋｍを歩きます。

　焼山寺からは、最初は車道を歩きます。すぐにショートカットする遍路道に入ります。杉林の中の

急峻な下り道です。疲れが出始めた足には堪えます。ずっと山道かと思っていましたが、やがて

車道に合流。さすがにこの時期なので、車はほとんど走っていません。

　焼山寺から１．８ｋｍ、時間では３０分ほど下った所に杖杉庵があります。ここにお遍路の最初の

巡拝者と言われている衛門三郎の銅像が建っています。ここで一息入れます。



　　　　　　　　　　　　杖杉庵　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弘法大師と衛門三郎像

　衛門三郎の事はググると次のとおり書かれていました。「その昔、伊予国(愛媛県)に衛門三郎と

いうお金持ちなのにケチな長者がいた。そこに諸国を巡っていた弘法大師が訪ねて施しを幾度に

わたりお願いしたが、衛門三郎は何もあげなかった。それどころか大師の鉢をうばって投げ捨てた。

すると鉢は8つに割れ散った。その後8日間、衛門三郎の8人いた子どもが毎日1人ずつ死んでいった。

そこで衛門三郎は自分の強欲さを悟り、大師の後を追いかけて、四国八十八カ所を巡った。ところが

２０回まわっても大師に会うことができない。それで、２１回目は逆にまわり、ついにここ焼山寺で大師

に巡り会うことができた。でもそのとき衛門三郎はもう死にかけていた。大師は、衛門三郎の最期を

看取り、「衛門三郎再来」と書いた石を三郎の手に握らせ、再来を祈願した。大師が墓標として

衛門三郎の杖を立てると、杖から芽が出て大杉が育ったという。その杉が、ここ「杖杉庵」の名前の

由来でもある。」だそうです。）大師の足元にひざまずいている像もあります。ここでは休まずに進み

ます。

　杖杉庵の横から畑の中を横切り、草むらのある遍路道をたどって鍋岩へ向かいます。この時期は

草も枯れていますが、夏場はかなり草が生い茂っているのではないかと思います。そうなるとマムシ

に注意しないといけません。夏場の遍路の大敵です。

　距離で約１．７ｋｍを歩き、ようやく鍋岩の集落に到着。１３：０５着。この区間はずっと下りで標高差

約２００ｍを下りました。鍋岩の集落にバス停があり、そこから１日３本のバスがあります。

予定より少し早く付けましたので、１０分ほど待ちましたが無事に乗れ、温泉に向かいます。

　余談ですが、某旅行会社の観光バスが停まっていました。（後で聞いた話ですが、この１１番から

１２番の区間だけ歩くツアーがあるそうです。）

　道沿いにコンビニがあるので、終点の１つ手前のバス停で降りて、明日の昼食とアルコールを買い

出し。そのあと宿まで歩かなくてはなりませんが、仕方ありません。

　こちらも余談ですが、コンビニのすぐ近くにお洒落れなレストラン「かま屋」がありましたので、

コーヒータイムとしました。隣に美味しそうなパン屋さんもありました。

　外を見るといつの間にか陽が差してきていて、ガラス越しに差し込む日差しでポカポカ陽気です。

　一休みして、いくらか疲れも取れましたので、先に進みます。道路沿いにある、「道の駅温泉の里

神山」に立ち寄り、その先にある「神山温泉ホテル四季の里＆いやしの湯」に到着。

　今回は少し贅沢をして温泉宿です。宿は部屋も広く、お風呂が２つあり、一つは宿泊者専用、

もう一つが日帰り用でした。温泉の泉質はまとわりつくような滑らかなお湯で良かったです。

　疲れはありますが、足の調子は問題ありません。実は、前回足に水ぶくれができて痛たかった

為、登山の時のように靴下を２枚重ね履きしました。マメや水ぶくれ防止に効果があります。下に履

く方を５本指タイプにしてあり、こうしてからマメや水ぶくれがほとんどできたことがありません。それ

でも心配な方はできそうなところに医療用のテープを張るとさらに効果があります。

　食事も美味しく、アルコールも進み、疲れもあり、２０：００頃に爆睡。

　３日目

　昨夜も早寝したせいか、全員が６：００には起床。７：００から朝食。温泉のおかげか、昨日の疲れも

かなり癒されました。

　少し遅めの８：００にスタート。タクシーが早い時間に予約できず、この時間となりました。台数が

少ないのかと思っていましたが、運転者さんが町内バスの運転も兼ねていたため、だそうです。

　すっかり明るくなっていて、気温も多少は上がっています。いつものように朝早いスタートだと少し

寒かったかもしれません。天気は今日は快晴です。昨日バスに乗った鍋岩に戻り、登山口ならぬ

遍路道に入ります。



　　　　　　　鍋岩のバス停　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　遍路道入口の道標

　山腹につけられた遍路道を歩きます。８：１５発。このまま玉ケ峠へ、と思っていたら１０分ほどで

数件の家が建つ集落の中に出ました。遍路道のしるしがあるので間違えてはいませんが、地図には

何も書いていないので首をかしげながら進むと、何やら「ガタンゴトン」という音が。よく見るとイノシシ

が罠にかかっていました。かなり大きなイノシシで罠の檻が壊れそうです。（多分大丈夫なのでしょう）

近づくと怖かったです。足早に立ち去りました。

　しばらく舗装された道を歩くと再び山道へ。ここから峠へは標高差約１５０ｍの登りです。この区間

はかなり厳しい登りが続き、大変でした。数回の休憩を入れて３０分で登りきりました。９：０５:着。

　ここの名前は「たまがとうげ」ではなく、土偏に上下で垰と書き「たまがたお」と呼ぶのでした。



　　　　　　　　　　玉が垰　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　切通しの先が左の写真

　垰は予想していたような山中の峠ではなく、写真の反対側は舗装された道路があり、小さな石仏が

数体ある小さなお堂と、こじんまりとした庵もあります。ここも「宿泊禁止」と書かれていますが、いざ

というときには泊まれそうです。トイレもあり水道もあります。

　峠から次の阿野の集落までは約５ｋｍ、標高差４００ｍを下るなだらかな舗装道「天空のへんろ道」

を歩きます。このルートは展望も良く、景色を楽しみながら歩けます。天空のへんろ道の途中に東屋

が１件ありました。「神山３６番」と書かれた東屋からの眺めは素晴らしいです。この遍路道は景色

を遮る木立もなく展望は良く、天気が良ければ快適な散歩が楽しめます。



　　　　　　　　　東屋　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山村風景

　ガードレールや電柱に案内が付けられています。いろいろ種類があります。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いろいろなタイプのシールの案内



　　　　　　　　　　　　英語バージョン　　　　　　　　木製の立て札タイプと大きなシールタイプ

　鮎喰川沿いを大日寺を目指してひたすら歩きます。やがて阿野集落に１０：０５に到着。ここで県道

に合流。この集落に「植村旅館」があります。先ほどの鍋岩から１３番大日寺に至るルート上約１７ｋｍ

にある宿泊施設はこの植村旅館だけなので、朝に藤井寺を出ると、泊るのは鍋岩の宿か、私たちが

泊った神山温泉か、この植村旅館かになります。健脚の方はここまで来れるでしょうが、ほとんどの

方は手前の２つに泊まることになります。

　それからこの町は、町内に等身大の人形がたくさん置かれています。まるで生活しているかのよう

に置かれています。三好町のもう少し山のほうにある集落で、１００体以上の人形が置かれていると

聞いていますが、ここも同じなのでしょうか？



　　　　　　　楽しい人形たち

　ここから川の右岸に渡り、畑の中から山道の遍路道を歩きます。やがて駒坂峠と書かれた看板

のある最高地点を越え、急坂を下ります。小さな峠を１つ越えることになりましたが、この区間は川が

大きく蛇行しているため、ショートカット(数百メートル）したことになります。

　再び鮎喰川に出て、川に掛かる潜水橋を渡ります。１０：３５。



　　　　　　　　　　　　潜水橋（ここは幅が狭いタイプでした）

　渡った所で再び県道に合流。そこから約２ｋｍ歩くと広野橋へ着きます。ここを右折して、橋を渡ると

神山温泉からの県道ルートと合流。この広野橋から１３番札所大日寺までは約７．５ｋｍあります。

まだまだ先です。山腹が見事に紅葉していました。今年は山の上よりも山麓のほうが紅葉が綺麗です。



　　　　　　　　　　紅葉

　１１：４０に高瀬河原の休憩所に到着。ここで昼食です。川の流れを見ながらおにぎりを食べます。

河原に降りれるようになっていますが遊泳は禁止となっています。

　足が痛くなってきました。やはり舗装された道を登山用のハイカットの靴で歩くと足が痛くなります。

次回の鶴林寺と太龍寺の間は山道ですが、その前後を考えると、ランニング用のローカットの靴が

良いと思います。

　道路を黙々と歩きます。疲れと足の痛みで言葉が出なくなり無口になってきました。

　１２：４５に「おやすみなし亭」という休憩所に到着しました。建物の中には、みかんや飴やインス

タントコーヒーの御接待がありました。疲れた体にしみわたり、四国の方の温かい気持ちが伝わり

ました。（実はこの時地図を忘れたのですが、連絡したところ、この建物を管理している関係者の

方がわざわざ送っていただけることになりました。感謝という言葉しかでき来ませんでした。）

　１３番大日寺にようやく到着。１３：１０。さすがに疲れました。この寺は鮎喰川畔にあるこじんまり

とした寺で、山門を抜けるとすぐに本堂があります。境内には「しあわせ観音」という観音像があり

ます。



　　　　　　　　　１３番大日寺　　　　　　　　　　　　　　　しあわせ観音

　道路を挟んだ向かいには、阿波一宮の神社があります。こちらも併せてお参りしました。ここの

本堂の両横には馬の像があり、下をくぐれるようになっています。何か謂れがあるのでしょうか？



　　　　　阿波一宮神社の馬の銅像

　今日はこの寺までの予定でしたが、時間も十分あり、足のほうもまだ大丈夫ということで先に進み

ます。１６番まで巡拝できると、次回が楽になります。

　ここから、１７番の井戸寺までは札所がつながっています。札所間の距離はせいぜい１〜２ｋｍ

程度なので、徳島ではかつて５ヶ所参りというものがあり、１３番から１7番までを一日でお参りする

習慣があったと言われています。確かに１１番から１３番の距離や難路と比べるとこの区間はお散歩

のように感じます。

　大日寺横の脇道から１４番常楽寺を目指します。１３：２０発。大日寺から常楽寺までの距離は

約２．３ｋｍで、鮎喰川を渡り、途中に坂道もありましたが、１３：４５に到着。かなりのハイペースで

歩きました。

　それから、道路脇にはいくつもの種類の案内板があるのですが、距離の表示がいささか違って

います。この区間も「常楽寺まで１．４ｋｍ」の案内板を見た後、２００ｍ位進んだところで「常楽寺ま

で１．５ｋｍ」の案内板がありました。さらに２００ｍ進むと今度は「常楽寺まで１．０ｋｍ」の案内板が

ありました。設置した方が違うせいだと思いますが、できれば距離はきちんと合わせてほしいもの

です。

　このお寺は山門がないようです。入口から階段（この会談も岩を削って造られていました。）を上って

境内に足を踏み入れると、岩がむき出しになっているところがあります。「流水岩の庭」というそうです。

まるで水が流れていそうな岩肌が広がっています。あえてこの岩の断層を残したんでしょうね。



　　　１４番常楽寺（石柱が山門の代わり）　　　　流水岩の庭（写真では迫力が伝わりません）

　本堂の前に大きなイチイ(別名/アララギ)の木があります。「あららぎの霊木」と呼ばれているそう

です。言い伝えがあり、「弘法大師がこの木を煎じて病気の老人に飲ませたら病気が治った。」との

ことで、この木の股に小さな弘法大師の像が置かれています。あらゆる病気に霊験があると言われて

いるので、私も手を合わせました。年を重ねて健康というもののありがたさを実感するようになりま

した。

　青空が広がり、気持ちのいい冬空です。大日寺までの険路から解放されて、ゆとりが出てきました。

　次の１５番国分寺は０．８キロ先にあります。田んぼを横目に歩きます。住宅の合間から本堂らし

い建物が見えますが、工事中のようで幌で覆われています。住宅に囲まれていて、入り口がどこだか

ちょっとわかりにくいです。ほどなく到着。１４：０５。山門はとても迫力があり、存在感があります。

やはり工事中で本堂や納経所は仮のものでした。



　　　　　　　　　１５番国分寺

　１０分で巡拝を済ませ、次に向かいます。実は電車の時間が迫っていて、少し焦っています。

何しろ１時間に１本しかないので。

　ここで新しいタイプの案内を見つけました。英語版で自転車遍路用の案内です。１，２００ｋｍを

２０日で回れますと書いてありました。



　　　英語版で自転車遍路用の案内

　その次の１６番観音寺は１．８キロ先にあります。このあたりは完全な住宅地です。そのため、道は

平坦でまっすぐで、わかりやすく助かります。かなりハイペースで歩き、１４：３５に到着。ここは周囲を

塀のかわりに、「金五拾円 名前」などと彫り込まれた石柱が道路に面したところにたくさん並べられて

いて境界となっています。山門は古くておもむきがありますが、本堂は新しく建て替えられているので

ピカピカでした。



　　　　　　　　　　１６番観音寺

　無事巡拝を済ませ、時刻は１４：４５。今回はここで打ち止め。帰路に着きます。

　一番近くにあるＪＲの駅に向かいます。５００ｍほどの距離ですがわかりにくく、歩いていた方に

訪ねてようやく辿り着きました。駅名は「府中」と書いて「こう」と読みます。一説によると、江戸時代

に「ふちゅう＝不忠」に通じるのを嫌った徳島藩が、「孝」に通じるよう読ませたと言われています。

　間に合わないのではと心配していましたが、１５：００に到着。１０分ほど余裕をもって着く事ができ

ました。最後の３寺はかなりのハイペースで回りました。電車に乗り込んで徳島駅へ。

　駅前で徳島ラーメンを食べましたが、正直なところ、私にはあまり美味しいとは思えませんでした。

次回に別の店にチャレンジしたいと思います。徳島駅前から高速バスとＪＲと新幹線で帰りました。

　今回はまさに山登りでした。ただ、初めから遍路歩きとは思わず、山に登ると考えていましたので、

それほど大したことはありませんでした。一応登山家の端くれなので。

　泊った温泉もよいお湯で、疲れをいやせたのも良かったです。今回も天候に恵まれたのは何より

でした。さすがに１２月となり、朝夕はかなり寒さを感じましたが、防寒装備も準備していましたし、

登りで体が温まりましたので、問題なく過ごせました。逆に、時期が１２月だったのもよかったと思い

ます。暑い時期でしたら、もっとつらかったと思います。

　でも、「遍路ころがし」と昔から伝えられる通り、生半可な気持ちで歩き遍路の旅をしようと思って

きた人は、ここで挫折すると聞いていますが、その通りです。

　第２回の歩き遍路を終えて、巡拝した寺は+５札所で１６札所。歩行距離は累計で約８０km。札所

数ベースだと５分の１を巡拝し、距離ベースだと全１，２００ｋｍの行程のうち１５分の１となりました。

まだまだ先は長いです。

　次回は、１７番井戸寺から徳島市内へ戻った後、難所の２札所を続けて歩く、おそらく最大の難所

です。ここで歩き遍路を挫折される方が多いと聞いていますので、気を引き締めて臨みたいと思い

ます。乞うご期待。

第２回でわかった事

・平地と山中とは全く別物と考えて臨むこと。

・山中にトイレはほとんどありません。トイレを見たら利用すること。

・山中区間は、コンビニ、宿泊施設はないので、手前で必要なものを買い出しする必要あり。

・御接待は数か所あり、ありがたさを実感しました。

・荷物を軽くしたのは正解でした。必要なのは、お遍路用品を除いたら、地図、下着の予備、食料、
　水、医薬品くらいです。後はなくても何とかなります。

・靴は平地では、トレッキングシューズのローカットタイプかランニングシューズが良いかと思います。

・靴下は薄いものを２枚重ねると、マメや水ぶくれ防止に効果があります。下に履く方を５本指タイプ
　にするとさらに効果的です。

・寺では巡拝と納経のみだと１５分ほどですが、団体とかち合うと大変です。どうしてもというときは
　作法の順を変え、先に納経所で御朱印をもらうのも１つの方法です。

・山中のルートや寺間の距離があるときは、まず宿を確認して行動するのが良いと思います。

・非常食を１食分持っていれば、何とかしのげると思います。